宇宙線が量子コンピュータに与える影響


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nature physics 2021/12/13の記事で、宇宙から降り注ぐ高エネルギー放射線による量子コンピューターへの破局的影響(catastrophic error bursts)の解決法を模索する論文が掲載されました。

https://arxiv.org/abs/2104.05219

量子コンピューターは量子もつれ状態にさせた多数の量子ビット(光子、電子、イオン、クーパー対など)が量子力学に従ってエネルギーを変化させていく性質を利用して、それを計算に見立てて人間が利用するものですから、熱雑音などの外部要因が加わってしまうと正確な計算結果を知ることができなくなってしまいます。それで、現在の半導体量子ビット方式の量子コンピューターでは、量子ビットを絶対零度付近まで冷却して開発が進められているのです。

今回、熱雑音だけでなく、宇宙から降り注いでくる放射線でも、量子コンピューターの計算が狂うことが示され、さらに、その解決法も模索されているのが注目に値する点です。

どうやって宇宙線の影響を排除するかというと、大規模な量子ビットの「空間および時間分解測定」を行うことにより宇宙線による影響を検知するということです。宇宙線が量子ビットに衝突したときの挙動を予め調べておけば、宇宙線によるエラー発生の兆候を掴むことができるはずだという理屈です。

※参考資料、最高エネルギー宇宙線(﨏 隆志)

https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/prwps/wp-content/uploads/2019/07/sako.pdf

こちらの解説によれば、世界最大の加速器CERNのLHCでも10の13乗電子ボルトまでしか加速できないが、100km四方に年に1個の割合という極めて少ないながらも、宇宙線の中には10の20乗電子ボルトを超える粒子も飛来することがあるということです。そんな凄いエネルギーの粒子が飛んで来たら、量子ビットなどひとたまりもありません。従来のコンピューターだってエラーになってしまいます。

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太陽フレア、磁気嵐でも同様の被害を受けることがあります。実際に、1859年の太陽嵐では、全米およびヨーロッパの電報システムが停止してしまいました。

従来のコンピューター(古典コンピューター)では電子数個以上の存在の有無をスイッチングして利用していますが、量子コンピュータでは、電子1個のエネルギーレベルを利用しますので、宇宙線のエラーの影響を受けやすいと懸念されているのです。

暗号資産への影響

量子コンピューターの性能は、暗号資産の価値に直結していますから、今回の記事は、暗号資産の価値にも直接影響しています。それは、「耐量子暗号システムが確立するには思ったより時間が掛かるかもしれない」、つまり、「従来の暗号資産でも安全性が保たれている時間が少し伸びるかもしれない」ということです。暗号資産の価値を認識するためには、量子コンピューターだけでなく、宇宙線を使った素粒子物理学の勉強もしなければならないというシビアな話でございます。

※参考記事

耐量子暗号

※参考書籍

 


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